〜 月の声(2)〜

Voix lunaire




何を嘆く、何故そんなにも涙する

見ること出来ぬ者よ
語ること出来ぬ者よ
動くこと出来ぬ者よ
聞くこと出来ぬ者よ

そなたには解からぬか
何が哀しいのか

姿が見えぬだけで、そんなにも嘆き、涙する
そなたには見えなくとも
そなたの居る場所に居なくとも
私は此処に居る

対極するこの場所で
私はそなたを感じ、そなたを見ている

雲に隠れたこの姿
欠けて見えぬこの姿
だが私は変わらず此処に居る

満点の星々が飾り立てなければ叶わぬのか
晴れ渡る空でなければ叶わぬのか
満ち足りた姿でなければ叶わぬのか

思いを巡らすことは出来ぬか
夢に見ることは出来ぬか
感じることが、何よりも大切であることに気づかぬか

見えぬ目で
語らぬ口で
動かぬ足で
聞こえぬ耳で

すべてを研ぎ澄ませ、感じるが良い
私は此処に居るのだと




≪Postface≫
月が見えない時にへこみがちな心に、そっと聞こえた月の声
ただ姿が見えないだけ
それだけで、何故人は恋しく月を探すのでしょうか
満ちては欠け、そしてまた新しいその姿を現わす月
此処にその姿を臨むことが出来なくても、対極に見せる姿が在る
ただそれだけ・・・
哀しむことはない
そう言っている気がするのです

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